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いいクルマってなんですか?
森さんが原稿の中でパンダを国民車にしたいというようなことをおっしゃっていました。でも少しわからないのですが、いったい、いいクルマってどういうもののことを言うんでしょうか。われわれが試乗してもすぐわかるものなのでしょうか。
【神戸市の林さん】
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「いいクルマって、ズバリどういうクルマ?」みたいな質問は、こういう仕事をやってるのでときどき受けます。他人からきかれなくても、自分ではしょっちゅう考えてましたよ。「ました」と過去形なのは最近はあまり考えてないからで、それはひとつにはメンドくさいから。あと、言葉にできる部分はとりあえずハッキリしちゃったから。
要するに、「運転しやすくて快適なクルマ」なんですね。私がだした結論は。でも、それだけをいわれて即座に納得してくれる人なんていません。「じゃあ、運転しやすくて快適なクルマは具体的にどこがどうなってるクルマ?」と、こうきます。で、次は私が「うーん……」てなる番。ヘタすると15秒間とか20秒間くらい「うーん……」が続くから、その段になって諦めはじめるか質問したことを後悔しはじめる人も少なくない(笑)。
「いいクルマの見分けかたを教えてください」と、要はたぶんそういうことなんです。このテのクエスチョンにこめられた質問者の気持ちというか要求って。それに対して、やれパッケージングがどうのシートの体圧分布がどうのと細かく説明していくことはまあ可能は可能です。リクツのうえでは。でもそれ、時間かかるしメンドくさい。というか、喋るほうも聞くほうも疲れるでしょ。「妻を娶らば才長けて……」みたいなのをクルマに関してえんえん説明してもしょーがない。
単純明解にして局所的なわりにかなり高い確率で正解に到達できるモノサシとして、「後席でもヘッドレストをちゃんと後頭部の真後ろまで引き出せるクルマかどうかをチェック」なんてのを以前はよく提唱してました。あるいは、同じく後席の安全ベルト環境のマジメさとかね。斜めのベルトがちゃんと肩から浮かずにかかってるかとか、あるいはアンカーのキャッチが座面をバタバタやっても底のほうに沈んだりしないかとか。テストドライブとかナシでショールームでてっとり早くいいクルマかどうか見分けたいんなら、それらはいまでもわりかし有効な方法だと思います。「スジのイイ客かどうかはまず靴をチェック」みたいなのとあんま変わりませんけど。思想的には。
世間の多くの皆さんにわかってもらいたいのは、もうちょっと初歩的なことですよ。すなわち、ほかのいろんな製品やプロジェクトやナンやかやと同じようにクルマにもアタリとハズレがある。でもって、ほんとにアタリなのは少ない(少ないからアタリなわけですわね、もっといえば)。クルマに詳しくなくたって、社会人として暮らしてればそのくらいのことはいわれたら誰だって理解できるでしょ? クルマだけ別ってことはないですから。社会人じゃなくても、たとえば授業がオモシロくてツイひきこまれちゃう先生がすごく貴重だってのと同じことだと思えばわかるでしょ? かと思うと、その授業オモシロい熱心でマジメな先生がインコーしちゃったりするから世の中一筋縄でいきませんな。問題は、インコーしよーがフリンしよーがその人が魅力的だったのは事実だってことですけど。えーとナンの話だっけ?
いいクルマ。私の場合、乗ってみて「ウワすっっげえイイわ!」って(アタマよりはむしろカラダで)思えたらとりあえず合格。事前に説明カマされて洗脳されて「なるほどたしかに……」程度に感心したのはたいがいダメか大したことないかどっちかだと経験上知りました。「ウワすっげえ……」がどうイイか、そのリクツは後から考える。原理主義的思考をアタマのどこかにもってたりそういうのを理解することは必要かもしれないけど、でもそれに帰依しちゃうとつまらない。……つまんないな。ある意味ラクだしズバズバやれて気もちイイかもしれないけど、世界が狭まる。「ナンかすっげえいいヤツ!」って叫んでもクルマを作ることはできないけど、洗脳されず帰依もしないで「ウワすっげえイイ!」っていえる(ある意味ただの動物に近い)状態をキープしていられればいいクルマを見分けることは簡単ですよ。おそらく。ちなみに、私はときどき〜しばしば洗脳されかけたり帰依しかけたりします。気をつけてるのはそこんとこですね。 (回答者:森 慶太)
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